5 MINUTES WITH: ASA-CHANG&巡礼

Photo & Text : Tasuku Amada / March 04, 2016

1998年に結成、現代音楽的アプローチで独特な音世界/言語世界を展開し、国内外で高い評価を獲得してきた音楽ユニット:ASA-CHANG&巡礼。2012年には中心メンバーのASA-CHANGに、サックス・フルート担当の後関好宏、ヴァイオリニストの須原杏を加えた3人体制となり、2016年3月には約7年ぶりとなる待望のニューアルバム「まほう」をリリース。本作の制作の一部はRed Bull Studios Tokyoで行なわれた。 その唯一無二の世界観はどのようにして生まれるのか? ASA-CHANGの頭の中はいったいどうなっているのか? そのヒントを探るべく、当スタジオにてレコーディング作業中のメンバーに集まってもらった。 (このインタビューは2015年11月に行なわれました。)

 

今日はどんな作業を?

ASA-CHANG(以下A):昨日の夜に書き上げた曲を早速録音します。

今日も強烈な世界観の曲が誕生しそうな予感がしますが、そんな独特な世界観のルーツはどんなところにあると思いますか?

​A:あのね僕は…人と比べて出来ないことが多いんですよ。
他の音楽を真似しようを思っても出来なかったりするし、みんなが普通に出来るあたりまえの情報処理能力もないし、そういうところに独特の要因があるんだと思います。
例えば、みんなは好きなアーティストのことを頭の中の引き出しにうまく整理して憶えておけると思うんですけど、僕はあんまりそういうのが出来なくて。なんか物置きみたいなところに雑然と入ってるみたいな(笑)。
それをたまーに引っぱり出してくると、本来のかたちの物が出てこないっていうか。よじれてしまってるというか。
どうしてこうなっちゃったんでしょう?(笑)

​ものごとをインプットするときに、整理して分析しながら憶えていくんじゃなくて、ただなんとなく頭の中に入ってるみたいな…?

A:そうですね、だからちゃんとしたこう…このアーティストのこのアルバムの何曲目のここが好きだとかって言えなかったり。
ただそのかわり衝撃的だった印象みたいなものはハッキリあって……。
音楽ってやっぱり「色」だと思うんですよ。っていうとなんだかスピリチュアルな感じになっちゃうんですけど。(笑)

でも半分冗談じゃなくて、僕は和声とかコード感とかリズム感とかで音楽を認識してないんだと思うんですよ。人とはちょっと違う風に頭の中に入ってるんじゃないかなあと。

音楽を楽譜っぽく聴いてるんじゃなくて…

A:楽譜としても、音像としてさえも入ってないんじゃないかな?
もう完全に飲み込んじゃうみたいな。音をぜんぶ。耳じゃなくて口で飲み込んじゃうみたいなことをしちゃう。

音楽以外でもそういう感じですか? 例えば絵画とか、映画とか…

A:たぶんそうです。なんかよくわかんないまんま、1シーンだけが印象に残ってたりとか。

他のおふたりから見て、「ASA-CHANGのここが変わってるな」って思うことはありますか?

後関好宏(以下G):レコーディングをしてて、指示をもらうときに、言っていることがうまく汲み取れないことがあります。(笑)
うまく汲み取れたか自信がなくて、ほんとにこれでいいのかな?と思って演奏してみたら「いまのが良かった!」って言われたり。そういう、普段の自分じゃ出せないようなところを引き出してくれますね。
たぶん朝倉さん(ASA-CHANG)がイメージしてることをパッと理解してやれる人だったら、こうはならないんだろうなっていうようなレコーディングを、今回のアルバムでは特に多くやっていますね。

須原杏(以下S):私はバイオリンがメインなので、音楽的なルーツが朝倉さんと全然違うんです。“楽譜っぽい”音楽をやってきたので、レコーディングを一緒にやってるとぶっとびますね。(笑)
今まで良いと思っていたものが、必ずしも良いわけじゃない、みたいな。でも最終的に作品が出来たときに、ああこういうことだったんだな、って納得するんですよね。そういうことの連続で、最近ようやく掴めてきた感じがします。

A:僕はそういう、きちんと“楽譜っぽく”音楽を作る人へのコンプレックスがあるんです。
僕にとって音は、ほんとに「色」なんですよ。楽器なんか絵の具やクレヨンみたいなもんで。

ASA-CHANGさんは、言葉の扱い方もすごく特徴的じゃないですか。それも「音は色だ」という感覚から来てるんですかね?

A:(言葉は)色彩的ですよね。

言葉を「意味」として捉えてる部分と、「音」として捉えてる部分と、どちらが大きいですか?

A:意味でしかないですね。「花」は「花」だし。

でも、言葉を解体して「音」っぽく使った作品をつくるじゃないですか。

A:たしかに「音」っぽく使うんですけど。でも言葉を解体するには、もともとの「意味」がすごく大事。
言葉をリズムっぽく解体して「意味」を崩壊させるんですけど、崩壊させる前にそもそもの意味を知らないと崩壊させられない。
崩壊させることで“意味をずらす”んです。

あと、サウンド的なことを言えば、日本語っていうのはとてもスタッカートですね、音が切れてるんですね。
「はな」なんて二音じゃないですか。でも「flower」っていったらどこで切ればいいのか。「は」「な」っていう二音に、打楽器的なリズムやグルーヴがある。そんな言葉を使っている日本人には、独特な音楽観やリズム感があるんでしょうね。
そういう言語にしかできない表現方法があっていいんじゃないかなあと思うんです。

G:言葉といえば、朝倉さんの書く楽譜も独特。一見すると古文書みたいな…(笑)

A:言葉とリズム譜が書いてあるだけなんだけどな…(笑)

S:昔使ってた楽譜を今見ると、ちょっと色褪せててほんとに古文書みたいなんですよ。(笑)

A:気持ち悪いかもね。ほんとは見ちゃいけない、暗号みたいな。(笑)

土に埋めといたら、いつか発見した人がびっくりするかもですね。(笑)

A:ただやっぱり、その譜面をみてわくわくするか、そこでぱたんと閉じてしまうかの違いはあると思うんですよね、音楽家として。
ここにいるふたりはそれを開いてくれているっていうのは嬉しいことです。

 


ASA-CHANG&巡礼
​「まほう」